無愛想な同期の甘やかな恋情
「なんでそんなギリギリで、穂高君の気が変わったのかわからないけど。私にとっては超ラッキーだったなあ」


両手両足をグッと前に伸ばして、声を弾ませた。


「え?」

「だって、穂高君が化粧品部門に配属されたおかげで、私たちは『名コンビ』なんて言われるようになって、会社の業績に貢献できるまでになった」


肩越しに彼を振り返って、ニコッと微笑む。
それには穂高君が、ほんのちょっと口をへの字に曲げた。


「よく言うよ。お前ついさっき、最初の企画で間中さんに担当してほしかったって、言ったばかりじゃねえか」

「! そ、それは」

「しかも、間中さんの『協力』に、あっさりやられて惚れるくらい単純なくせに、三年もお前の企画した商品を開発してる俺には目もくれないとか。どういうことだよ」

「っ」


わかりやすく拗ねてふて腐れた表情を見せる穂高君に、不覚にもドキッとしてしまう。
上目遣いのじっとりとした目を向けられ、私は思わず口ごもった。
けれど、すぐに気を取り直して、胸を反らす。


「それは、穂高君が悪い!」

「へ?」

「だって、私、穂高君に嫌われてると思ってたもん。言ったでしょ? つれないし素っ気ないし、私との間に壁作って……」

「あの夜のこと、結構細部まで覚えてるみたいだな、お前」
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