無愛想な同期の甘やかな恋情
涼しい顔をしてさらっと遮られ、私はグッと言葉に詰まった。
穂高君は、なんだか意地悪にニヤニヤして、私の反論を待っている。


「お、覚えてるよ。私が、穂高君と仲良くしたいって言ったせいだって」


肩を竦めて、膝を抱え込む。
そこに顎を乗せて呟くと、穂高君が壁から背を起こした。


「……っていうか、私のこと好きだったなら、どうして」


独り言のつもりだったのに、穂高君の耳には届いてしまったようだ。
「え?」と隣から覗き込まれ、一瞬ドキッとしたけれど、思い切って彼の方に顔を向ける。


「どうしてあんな、一線置いた接し方してたの。そりゃあ、近寄りがたいし、好きとか嫌いとかそういう感情抱く以前の問題で……!」

「こういうこと、したくなるから?」


なぜか語尾を尻上がりにして、穂高君が私を遮った。
その言葉の意味がよくわからず、きょとんとしてしまった時。


「……!」


穂高君が大きく乗り出してきて、私の唇を奪った。
彼の唇は掠めるだけにとどまらず、一度強く押し当てられ、キスの余韻を残すようにして、離れて行く。
その間ずっと、大きく目を見開いていた私に、彼はふっと口角を上げて笑った。


「間中さんのこと好きだって知ってるのに。冴島と距離縮めて接したりしたら、二人きりで仕事することも多いのに、理性が利かなくなる」
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