一目惚れの彼女は人の妻
それから数日後の週末。私達は近くのホームセンターへ行っていた。庭に植えるお花の苗を買うために。
愛子ちゃんを乗せたベビーカーを私が押し、充(みつる)さんは買い物カゴを手に提げて、外にたくさん並んだ色とりどりのお花を見て歩いていた。
どれもみんな綺麗で可愛いけど、パンジーかビオラに候補は絞られた。私はどちらでも良いと思うけども。
「宏美ちゃんが好きな方でいいよ」
「ううん、ここはやっぱり、充さんが決めてください」
「そうかい? じゃあ、こっちかな?」
充さんが選んだのは、ビオラの方だった。
「このカゴに、入るだけ入れちゃおう」
とか言って、充さんがカゴの中にビオラのポットを並べていた時だった。
「ひゃっ」
突然、私の胸に何かが触り、つい変な声が出てしまった。その何かとは、それにしては小さ目で細い方だと思うけど、男の人の手だった。そして次の瞬間、
「ごめんなさい!」
と言って、男の人が私に頭を下げていた。
ああ、わざとじゃないのね。
と思い、怒る気持ちはなかったんだけど、その人が顔を上げたのを見て、私は我が目を疑った。だって、その人は正に、数日前に駅で見かけた、痴漢男だったから。
同期の加奈子の言い方を真似れば、"爽やかイケメン痴漢男"だった。
愛子ちゃんを乗せたベビーカーを私が押し、充(みつる)さんは買い物カゴを手に提げて、外にたくさん並んだ色とりどりのお花を見て歩いていた。
どれもみんな綺麗で可愛いけど、パンジーかビオラに候補は絞られた。私はどちらでも良いと思うけども。
「宏美ちゃんが好きな方でいいよ」
「ううん、ここはやっぱり、充さんが決めてください」
「そうかい? じゃあ、こっちかな?」
充さんが選んだのは、ビオラの方だった。
「このカゴに、入るだけ入れちゃおう」
とか言って、充さんがカゴの中にビオラのポットを並べていた時だった。
「ひゃっ」
突然、私の胸に何かが触り、つい変な声が出てしまった。その何かとは、それにしては小さ目で細い方だと思うけど、男の人の手だった。そして次の瞬間、
「ごめんなさい!」
と言って、男の人が私に頭を下げていた。
ああ、わざとじゃないのね。
と思い、怒る気持ちはなかったんだけど、その人が顔を上げたのを見て、私は我が目を疑った。だって、その人は正に、数日前に駅で見かけた、痴漢男だったから。
同期の加奈子の言い方を真似れば、"爽やかイケメン痴漢男"だった。