一目惚れの彼女は人の妻
 ちなみに、私と充さんは同じ職場で働いていて、充さんは経理課の課長で私は主任。つまり、充さんは私の直属の上司だ。

 5年ぐらい前、仕事の後に充さんと居酒屋でお酒を飲んでいたら、そこで偶然お姉ちゃんと出くわし、それをきっかけに二人は付き合いだし、紆余曲折はあったのだけどゴールイン。

 私の家の近くにマイホームを建て、愛子ちゃんが生まれて、幸せの真っ只中に、まさかの不幸が……

 それ以来、休日の度に私は充さんと愛子ちゃんの家に入り浸っていたけど、少し控えた方が良いみたい。

「あ。お花を植えないと、ですね?」

「それも私だけで大丈夫だよ」

「そうですか……」

 分かれ道に差し掛かり、私はそこで失礼する事にした。

「では、私は帰りますね」

「うん。今日はありがとうね」

「いいえ。愛子ちゃん、バイバイ」

 屈んで愛子ちゃんにバイバイしたら、愛子ちゃんも紅葉のような小さいお手てで、私にバイバイしてくれた。

 愛子ちゃんは1歳を少し過ぎたけど、まだ喋らない。もしかすると、お姉ちゃんが生きていたら、今頃は喋ってるんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろう。

 近い将来、私が愛子ちゃんのお母さんになるって、アリなのかなあ……
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