一目惚れの彼女は人の妻
「で? あんた、無事だったの? ああ、彼女がいたんじゃ大丈夫か」

「ううん、無事じゃなかった」

「触られたの? どこ?」

「胸」

「あちゃー。だから言ったじゃない。Dカップの胸に気を付けろって……」

 Eだけどね。

「あたしさ、宏美から聞いても、実は本気にしてなかったんだ。"爽やかイケメン痴漢男"の存在を。何かの間違いだろうと思ってた。でも、本当だったんだね。びっくりだわあ」

 実は私にもそういう思いがあった。ううん、今でも本当は違うんじゃないかと。あくまで願望だけど。

 えっ?

 私、願望って言った? 心の中で、だけど。願望って、何?

「どうしたの? 考え込んじゃって。うどん、伸びちゃうよ?」

「う、うん……」

 私はお箸を動かし、味も分からないままうどんを啜り、思い浮かべてみた。ホームセンターで、間近に見た"爽やかイケメン彼女持ち痴漢男"の、整い過ぎと言ってもいい顔を。

 その瞬間、私の心臓の辺りが、キューッと締め付けられた。

 こ、これって、まさか……嘘でしょ!?
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