一目惚れの彼女は人の妻
 私、あの人の事、好きになっちゃったの?
 痴漢で彼女持ちで、しかも、どう見ても年下なのに?

 バカだ。バカ過ぎる。
 バカ、バカ、バカ、バカ、バカー!

「誰がバカだって?」

「へ?」

 私、口に出してた?

「あたしの事じゃないよね?」

「違うよ。私の事」

「なんで?」

「なんでって、それは……」

 言えない。言えるわけない。たとえ親友の加奈子でも。

「あ。分かっちゃったかも」

ドキッ

 加奈子は、何をどう分かったのかは知らないけど、私の心を探るかのように、ジーッて感じで私の目を覗き込んで来た。

「自分の気持ちに、気付いたんでしょ?」

「違う」

「でも、認めたくないのよね?」

「違う」

「正直になりなよ?」

「違うってば。あんな、"爽やかイケメン彼女持ち年下痴漢男"なんか、好きになる訳ないでしょ!」

「やっぱりね」

「あっ……」

「ひとつ増えてるし」

 あちゃー。わざわざ自分からバラしちゃった。私って、ほんとにバカだわ。

 私が落ち込んで、うな垂れていたら、

「恋って理屈じゃないからね。仕方ないよ」

 と、加奈子は言ってくれた。
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