一目惚れの彼女は人の妻
「宏美ちゃんは花粉症だっけ?」

「ちょっと風邪気味なんです」

 充さんに、嘘を付いてしまった。私、何やってるんだろう……

 そもそも痴漢男、もといシュン君が、毎週ホームセンターに来るとは考えにくいわけで、激しく後悔し始めた時、なんと、シュン君を見つけた!

 あの時と同じ、外のお花なんかが並んだ所に、彼は一人で立っていた。今日は彼女を連れてないみたい。

 改めて見るシュン君は、やっぱり可愛いしカッコいいと思う。女性はみんなシュン君を見るけど、それを彼は全然気にせず、誰かを探しているように見える。

 私を探してるとか?

 なんて、自意識過剰もいいとこよね。きっと、痴漢する相手を物色してるんだわ。

 あっ。

 私は大変な事に気付いてしまった。それは、いくら私が変装しても、充さんがしてないんじゃ意味が無いという事。

 でも、シュン君の目の前を横切ったけど、彼は私に気付かなかった。そして私は、もっと根本的な事に気付いてしまった。

 そもそもシュン君は、私なんか気にしていない、という事実。正確には事実ではないけども、少し胸が大きいだけで、それにちょっと触れただけの年増の地味女に、シュン君が興味を持つとか、どうして思えたんだろう。

 私って、本当にバカだわ。呆れ過ぎて、涙も出ない。もうシュン君の事は忘れよう。そう思ったのだけど……

 まさか数日後に、思わぬ場所と状況で、彼に会うとは夢にも思わなかった。
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