一目惚れの彼女は人の妻
1時間半ほどで懇親会はお開きとなったが、俺は全くの不完全燃焼。一酸化炭素中毒で死にそうだ。それは冗談だが。
料理は美味かったが満腹ではなく、酒は旨かったが全然酔えず、何と言っても”宏美さん不足”だ。不足どころか、宏美さんとは一言も話せなかったのだ。
まだ遅い時刻ではないが、宏美さんは夫やお子さんが待つ家へ急いで帰るだろうし、悪いけど斎藤さんに捕まりたくないしで、俺は早々に駅へ向かって歩き出したのだが……
後ろからカツカツというヒールの音が近付いて来て、俺の腕が誰かに引かれた。「待って?」の言葉と同時に。
声で分かってはいたが、振り向けば宏美さんだった。宏美さんは、息を切らしながら俺を見ていた。潤んだように見える瞳で。そんなに苦しいのか、上下する胸に手を当てながら。
「帰るの?」
「はい」
「用事あるの?」
「無いですけど?」
「じゃあ……」
と言ったところで、宏美さんは言葉を切った。ちなみに、宏美さんはまだ胸に手を当てている。
「飲み直さない?」
料理は美味かったが満腹ではなく、酒は旨かったが全然酔えず、何と言っても”宏美さん不足”だ。不足どころか、宏美さんとは一言も話せなかったのだ。
まだ遅い時刻ではないが、宏美さんは夫やお子さんが待つ家へ急いで帰るだろうし、悪いけど斎藤さんに捕まりたくないしで、俺は早々に駅へ向かって歩き出したのだが……
後ろからカツカツというヒールの音が近付いて来て、俺の腕が誰かに引かれた。「待って?」の言葉と同時に。
声で分かってはいたが、振り向けば宏美さんだった。宏美さんは、息を切らしながら俺を見ていた。潤んだように見える瞳で。そんなに苦しいのか、上下する胸に手を当てながら。
「帰るの?」
「はい」
「用事あるの?」
「無いですけど?」
「じゃあ……」
と言ったところで、宏美さんは言葉を切った。ちなみに、宏美さんはまだ胸に手を当てている。
「飲み直さない?」