一目惚れの彼女は人の妻
「何を言ってるんですか。もう遅いんだから、帰りますよ?」

 宏美さんは、冗談で言ってると思ったのだが、

「イヤ。行こうよー?」

 甘えるように言い、俺の腕をグイグイ引っ張った。どうやら本気らしいが、夜の公園で、いったい何をしようというのだろう……

 仕方なく、俺と宏美さんは公園の中に入って行った。暑くもなく、寒くもなく、過ごしやすい夜だ。

 見上げれば、街灯に照らされた新緑が綺麗で、しばし見惚れて宏美さんに視線を戻したら、宏美さんは、上着のボタンは既に外されていて、ブラウスのボタンに指を掛けてるところだった。

「ちょっと、何やってるんですか!」

 幸い、周りに人はいないが、まさか、こんな所で服を脱ぐとか、有り得ない。宏美さん、どうしちゃったんですか?

「俊君……」

 宏美さんは、手は止めたものの、熱っぽい目で俺を見つめた。

「何でしょうか?」

「触りたいでしょ? 女の人に」

「はあ?」

 また、何を言い出すやら。宏美さん、完全に飲み過ぎだな。

「どうなの?」

「そりゃあ、俺も男ですから」

「やっぱりね」

 だから、その"やっぱりね"って、意味不明なんですけど?

「そういう時は……私を触って?」
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