一目惚れの彼女は人の妻
「宏美さん、本当に触っていいんですね?」

「うん」

 宏美さんは、再び指を動かし、ブラウスのボタンを外し始めた。

「それはやめてください」

 すかさず俺は、手でそれを止めたが、その時に見てしまった。宏美さんの、見事な胸の谷間と、ピンクのブラを。Dではなく、Eかもしれない。あるいはFかも。

「あの……どこを触ればいいんですか?」

「どこでも。ちなみに、胸はEカップだから」

 やっぱりEだったかあ……

「本当にどこを触ってもいいんですか?」

「いいわ。俊君が触りたい所を、好きなだけ触って? 気が済むまで」

 うーん、どうしようかな。やっぱり、あそこだろうな。

「じゃあ、触りますよ?」

「うん」

 宏美さんは目を閉じた。そして、体が小刻みに震え出した。
 口では強気な事を言っているが、きっと怖いんだろうなと思う。なんか、可愛いなって、俺は思った。

 俺は右手を伸ばし、宏美さんの左の頬に手の平を触れさせた。思った通り、温かくて、柔らかくて、すべすべしている。そして、頬に触れたまま、親指で宏美さんのサクランボのような唇を、そっとなぞっていった。

 ああ、この感触、堪らないなあ。俺はこれをずっとしたかったんだ。欲を言えば、俺の唇で触れたかった。つまり、キッス。

 そう言えば、キスも触るという行為に含まれるのかな。含まれるんじゃないか?

 なんてな。それをしたら一線を超えた事になってしまう。つまり、不倫。 
 名残惜しいが、俺は手を引っ込め、「終わりました」と宏美さんに告げた。

 すると宏美さんは目を開き、不思議そうな顔で俺を見た。
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