一目惚れの彼女は人の妻
「ひゃっ」
という女性の小さな悲鳴がすぐ横から聞こえ、俺の手は、その女性の、たぶん胸に触れてしまったと思われ、慌てて
「ごめんなさい!」
と言うのと同時に、その女性に向かって頭を下げた。
不可抗力とは言え、まずい事をしてしまったわけで、女性が怒ったらどうしようか、と思いながら、恐る恐る顔を上げて女性の顔を見たら……
うわっ。なんて……魅力的なんだろう!
俺の目は、その女性の顔に釘付けになってしまった。その女性の、黒縁の眼鏡越しの目は、黒目がちで綺麗に澄み、少し見開いて俺の顔を真っ直ぐ見ていた。俺はまるで、その目に吸い込まれるんじゃないかと思った。
形の良い小さめな鼻の下の唇は、自然だとしたら少し赤過ぎるくらいのピンクで、適度に厚みがあり、わずかに開いていた。例えるなら苺、いや、さくらんぼみたいだと思った。
その唇が微かに動き、「ち……」と聞こえたような気がするが、"ち"の続きは何だったのだろう。ちなみに、舌打ちではなかったと思う。というか、思いたい。
俺とその女性は、しばし見つめ合った。まるで時が止まったかのようで、ほんの一瞬の事だったのか、何秒も、あるい何十秒もそうしていたのかは、さっぱり分からない。
「ヒロミ……」
という男の声で、それが終わるまで。
という女性の小さな悲鳴がすぐ横から聞こえ、俺の手は、その女性の、たぶん胸に触れてしまったと思われ、慌てて
「ごめんなさい!」
と言うのと同時に、その女性に向かって頭を下げた。
不可抗力とは言え、まずい事をしてしまったわけで、女性が怒ったらどうしようか、と思いながら、恐る恐る顔を上げて女性の顔を見たら……
うわっ。なんて……魅力的なんだろう!
俺の目は、その女性の顔に釘付けになってしまった。その女性の、黒縁の眼鏡越しの目は、黒目がちで綺麗に澄み、少し見開いて俺の顔を真っ直ぐ見ていた。俺はまるで、その目に吸い込まれるんじゃないかと思った。
形の良い小さめな鼻の下の唇は、自然だとしたら少し赤過ぎるくらいのピンクで、適度に厚みがあり、わずかに開いていた。例えるなら苺、いや、さくらんぼみたいだと思った。
その唇が微かに動き、「ち……」と聞こえたような気がするが、"ち"の続きは何だったのだろう。ちなみに、舌打ちではなかったと思う。というか、思いたい。
俺とその女性は、しばし見つめ合った。まるで時が止まったかのようで、ほんの一瞬の事だったのか、何秒も、あるい何十秒もそうしていたのかは、さっぱり分からない。
「ヒロミ……」
という男の声で、それが終わるまで。