一目惚れの彼女は人の妻
その女性は、すぐに声を発した男を向き、
「あなた!」
と言った。そして、
「気に入ったお花はあったの?」
とか言いながら、その男の方へ向かい、ベビーカーを押して行った。ベビーカーには、女の子と思われる赤ん坊が座っていた。
「ああ、これなんかどうかな?」
男が手にぶら下げた買い物カゴには、何本かの花の苗が入っており、"ヒロミ"というらしいその女性はそれを覗き込み、
「まあ、素敵。帰ったらすぐお庭に植えましょう?」
なんて言っていた。そして、レジの方へ行きかけて、クルッと俺を振り向いた。
何か言われるのかなと思ったが、それはなく、少しの間を置いて、「チッ」と言って、行ってしまった。
今のは確かに舌打ちだったと思う。もちろん、彼女の胸に触ってしまった俺への、抗議の意味で間違いないだろう。
「帰ろうよ、お兄ちゃん?」
呆然と、スタイルの良いヒロミさんの後ろ姿を見ていたら、いつの間にか恵美が俺の腕を持ち、ピタッと体を寄せていた。
「あ、ああ」
俺はその後、どうやって家に帰ったのか憶えていない。もし恵美が俺の手を引いてくれてなかったら、赤信号で車に轢かれてたんじゃないかと思う。
「あなた!」
と言った。そして、
「気に入ったお花はあったの?」
とか言いながら、その男の方へ向かい、ベビーカーを押して行った。ベビーカーには、女の子と思われる赤ん坊が座っていた。
「ああ、これなんかどうかな?」
男が手にぶら下げた買い物カゴには、何本かの花の苗が入っており、"ヒロミ"というらしいその女性はそれを覗き込み、
「まあ、素敵。帰ったらすぐお庭に植えましょう?」
なんて言っていた。そして、レジの方へ行きかけて、クルッと俺を振り向いた。
何か言われるのかなと思ったが、それはなく、少しの間を置いて、「チッ」と言って、行ってしまった。
今のは確かに舌打ちだったと思う。もちろん、彼女の胸に触ってしまった俺への、抗議の意味で間違いないだろう。
「帰ろうよ、お兄ちゃん?」
呆然と、スタイルの良いヒロミさんの後ろ姿を見ていたら、いつの間にか恵美が俺の腕を持ち、ピタッと体を寄せていた。
「あ、ああ」
俺はその後、どうやって家に帰ったのか憶えていない。もし恵美が俺の手を引いてくれてなかったら、赤信号で車に轢かれてたんじゃないかと思う。