一目惚れの彼女は人の妻
 ところが……

「わかりましたから、帰りましょう?」

 俊君は、まるで乗って来なかった。これは想定外。簡単に乗って来ると思ったんだけどなあ。

 私の酔っ払いの演技が、上手過ぎたみたいだ。だったらもう、演技はお終い!

「何がわかったのよ? あなた、私が酔ってるからって、バカにしてるでしょ? 私は、本気で言ってるんだからね?」

「そんな、バカになんてしてませんよ」

「本当に? もう、他の女に触らない?」

「はい、絶対に触りません」

 ダメだ。俊君は、私が酔っぱらって世迷言を言ってるに過ぎないと思ってる。でも、私は諦めないんだから!

「じゃあ、私に触って? でないと、信用出来ない」

「そう言われても……」

「私なんかじゃ満足出来ない? そうなんでしょ?」

「そんな訳ないじゃないですか。宏美さん、本当に触っていいんですね?」

「うん」

 やっと俊君はその気になってくれて、実は顔から火が出るほど恥ずかしいのだけど、私は俊君が触りやすいように、ブラウスのボタンを外し始めた。ところが、

「それはやめてください」

 なぜか俊君に止められてしまった。もしかして、胸はもう飽きちゃったのかしら。

「あの……どこを触ればいいんですか?」

 やっぱりかあ。胸には少しばかり自信があるんだけどなあ。

「どこでも。ちなみに、胸はEカップだから」

 さりげなく胸を自慢してみた。

「本当にどこを触ってもいいんですか?」

「いいわ。俊君が触りたい所を、好きなだけ触って? 気が済むまで」

 私は破れかぶれでそう言った。もう、なるようになれだわ。
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