一目惚れの彼女は人の妻
「恵美、俺はもう寝るから」

 俺の横で、呑気にスマホをいじる恵美に言った。俺の部屋から追い出すために。

 もう、宏美さんとの事を考えるのが面倒になり、眠くなってしまったのだ。夜も遅い時刻だから当然ではあるが。

「一緒に寝てもいいよ」

「バカ言ってないで、さっさと自分の部屋に戻ってくれ」

「こうやると、したくなっちゃう? いいよ、しても」

 恵美は、俺にベタっと抱き着いてきた。

「なるわけないって、いつも言ってるだろ?」

 恵美は、よくこうやって俺を挑発するんだ。もちろん、俺はいつも拒否するが。

 実は時々、やばい時もある。特に今みたいに、恵美が湯上りで、薄着で、ノーブラだったりすると、ちょっと、ムラムラとする事がある。俺も一応男だから。恵美には絶対言わないけれども。

 俺は理性を総動員して、恵美の体を俺から引きはがした。

「ちぇっ。お兄ちゃんとなら、禁断のカンケイになってもいいのにな」

 恵美が口にした”禁断のカンケイ”の言葉が、俺の胸にグサッと突き刺さった気がした。もし、俺と宏美さんの関係が深まれば、それは正に”許されざる、禁断の関係”という事になるのだから。
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