一目惚れの彼女は人の妻
「走って来たんですか?」
「ううん、早歩き。俊君を待たせちゃいけないと思って」
「別に構わないのに。急に呼び出したりして、すみません。迷惑ですよね?」
「そんな事ない。嬉しかった」
「え?」
「あ。何言ってるんだろう、私」
それはこっちが聞きたいです。どうして俺を惑わすんですか?
「電車に乗るの?」
「はい。取りあえず地元の駅に行こうかと。いいですか?」
「うん、いいわよ」
という事で、俺達は一緒に電車に乗った。並んで吊革につかまっていたら、
「俊君。私、ひ……」
「黙ってもらえますか?」
宏美さんが何かを言い掛けたが、俺はそれを止めてしまった。今、話をすれば、俺はあの画像の男の事で、宏美さんを問い詰めてしまいそうだから。電車の中で、そんな話はしたくなかったんだ。
「俊君……?」
「すみませんが、駅に着くまでは黙っていてください」
「う、うん。わかった」
それにしても、宏美さんはまた”ひ”と言った。それに続く言葉は何だったんだろう。
”人妻なんです”かな。それだったら、十分わかってますよ。宏美さん。
やがて電車は地元の駅に着いた。
「どこか、居酒屋さんとかに行く?」
と宏美さんは言い、思わず俺は、
「昨日の店ですか?」
と、前を向いたまま嫌みを言ってしまった。すぐに宏美さんが、ハッと息を飲むのがわかった。
俺は居酒屋とか、そういう所へ行くつもりはなかった。そんな気分ではなかったから。俺が行こうとしているのは、あの夜に宏美さんに腕を引かれて行った、公園だ。
幸い、あの夜よりも暖かく、風も穏やかだったから。
「ううん、早歩き。俊君を待たせちゃいけないと思って」
「別に構わないのに。急に呼び出したりして、すみません。迷惑ですよね?」
「そんな事ない。嬉しかった」
「え?」
「あ。何言ってるんだろう、私」
それはこっちが聞きたいです。どうして俺を惑わすんですか?
「電車に乗るの?」
「はい。取りあえず地元の駅に行こうかと。いいですか?」
「うん、いいわよ」
という事で、俺達は一緒に電車に乗った。並んで吊革につかまっていたら、
「俊君。私、ひ……」
「黙ってもらえますか?」
宏美さんが何かを言い掛けたが、俺はそれを止めてしまった。今、話をすれば、俺はあの画像の男の事で、宏美さんを問い詰めてしまいそうだから。電車の中で、そんな話はしたくなかったんだ。
「俊君……?」
「すみませんが、駅に着くまでは黙っていてください」
「う、うん。わかった」
それにしても、宏美さんはまた”ひ”と言った。それに続く言葉は何だったんだろう。
”人妻なんです”かな。それだったら、十分わかってますよ。宏美さん。
やがて電車は地元の駅に着いた。
「どこか、居酒屋さんとかに行く?」
と宏美さんは言い、思わず俺は、
「昨日の店ですか?」
と、前を向いたまま嫌みを言ってしまった。すぐに宏美さんが、ハッと息を飲むのがわかった。
俺は居酒屋とか、そういう所へ行くつもりはなかった。そんな気分ではなかったから。俺が行こうとしているのは、あの夜に宏美さんに腕を引かれて行った、公園だ。
幸い、あの夜よりも暖かく、風も穏やかだったから。