一目惚れの彼女は人の妻
「やっぱり宏美かあ。久しぶりだな?」
私は無言で、元カレの汚い手を肩から払いのけた。
「なんだよ。オレの事、忘れちまったのか?」
「それなら良かったわ」
私が女子大へ通っていた時、合コンでこの男と出会ったんだ。当時の私は、男への免疫が全くなくて、顔がいいだけが取り柄のこの男に、すぐに夢中になってしまった。
何度も何度も浮気をされ、お金をむしられ、それでも嫌いになれなくて、就活もしないこの男に、ようやく見切りをつけたのは今から10年前、私が今の出版社に就職した時だった。
「仕事の帰りか? 遅くまで大変だな。ご苦労さま」
チャラさは増したものの、あの頃と変わらぬ綺麗な顔で、眉を下げてそんな事を言われたら、知らない女は一発で落とされるかもしれない。もちろん私は知ってるけど。この男が口だけだって事は。
「どういたしまして。さようなら」
そう言って、ダメ男からさっさと離れようとしたのだけど、
「待てよ。酒ぐらい付き合ってくれよ」
ダメ男に腕を掴まれてしまった。すぐに払いのけたけど。
「触らないでよ」
「オレさ、仕事で悩みがあんだよ。相談に乗ってくんないかなあ」
「あんた、仕事してんの? どんな仕事?」
「それは飲みながら話そうぜ?」
という事で、私はダメ男の元カレと居酒屋へ行ってしまった。たぶん俊君に冷たくされて、心に隙が出来ていたんだと思う。
私は無言で、元カレの汚い手を肩から払いのけた。
「なんだよ。オレの事、忘れちまったのか?」
「それなら良かったわ」
私が女子大へ通っていた時、合コンでこの男と出会ったんだ。当時の私は、男への免疫が全くなくて、顔がいいだけが取り柄のこの男に、すぐに夢中になってしまった。
何度も何度も浮気をされ、お金をむしられ、それでも嫌いになれなくて、就活もしないこの男に、ようやく見切りをつけたのは今から10年前、私が今の出版社に就職した時だった。
「仕事の帰りか? 遅くまで大変だな。ご苦労さま」
チャラさは増したものの、あの頃と変わらぬ綺麗な顔で、眉を下げてそんな事を言われたら、知らない女は一発で落とされるかもしれない。もちろん私は知ってるけど。この男が口だけだって事は。
「どういたしまして。さようなら」
そう言って、ダメ男からさっさと離れようとしたのだけど、
「待てよ。酒ぐらい付き合ってくれよ」
ダメ男に腕を掴まれてしまった。すぐに払いのけたけど。
「触らないでよ」
「オレさ、仕事で悩みがあんだよ。相談に乗ってくんないかなあ」
「あんた、仕事してんの? どんな仕事?」
「それは飲みながら話そうぜ?」
という事で、私はダメ男の元カレと居酒屋へ行ってしまった。たぶん俊君に冷たくされて、心に隙が出来ていたんだと思う。