恐怖と愛
「そっか…。」

勇気先輩はいつもよりも静かにささやいた。


「由衣はどっちが好きなんだ。
岩丸君と俺…。」


「えっ?」


私はいきなりの質問にとまどった。

どっちが好き…。


「ごめんなさい。
今はそんなこと考えられる余裕がなくて…すみません。」


「いいよ…。

俺も悪かった。

状況も考えられずに言ってしまって…。

けどこれだけは覚えていて。

どんな由衣でも俺は好きだから。」
って言って私の頭をポンポンして去っていった。


私はまた泣いてしまった。

 私は泣いたあと、病室に戻ってきた。

そうしたら見覚えがある人がいた。

それは母親だった…。

私を捨てた母親。

しかも見覚えがない男もいる。

私は過呼吸になってしまった。


ナースコールをおしたかったが座りこんでしまい立つことが出来なかった。
苦しすぎて涙が出そうになる。

母親は私にこうやって言った。


「離婚後、あの人が逮捕されたと聞いて由衣も入院したって聞いたからお見舞いに
来てあげたの。

でね、由衣、まだ未成年だから私たちと一緒に来なさい。

それだけだから。

じゃぁね。」

「由衣ちゃんまた来るね!」
 母親の今、交際中の男性に言われた。
1度も会ってたこともなく全然知らない人。

< 29 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop