そして私は行間の貴方に恋をした
「げ・・・」

昼間の華月とのやり取りを思いだす。

『・・華月、柿崎華月』

「嫌な予感しかしねぇな・・」

「はい?」

思わず漏れた心の声に新人編集者が反応した。

「そのお嬢ちゃんの名前は?」

「ええと、確か華月だったと思いますけど」

「・・マジか」

どうにかして逃げられないかと思案したが、華月はおそらく俺の事に気付いている。つまりどう考えても逃げる事は不可能だった。

「わーったよ、行きゃいいんだろ」

俺は吐き捨てるように編集に言ってから受話器を置いた。



翌日、いつもの公園に華月は来なかった。次の日も、その次の日も。そして、そのまま日曜日が訪れた。

編集が『ドレスコードがあるので』と言っていたのは覚えていたが、俺はあえて普段着を選んで家を出た。




< 19 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop