そして私は行間の貴方に恋をした
会場へ向かいながら、俺はある事を考えていた。それは『何故、華月は俺をわざわざ呼びつけたのか?』。

ただのファンなら初めて会ったあの日にそう言えばいい。『山田太郎』とゆう事にあの時は気付いていなかったとしても、次に会った時には名乗っている。

確信が持てなかったとしても、一言尋ねれば済むはずだ。お世辞にも有名とは言えない作家を柿崎グループの令嬢が誕生パーティーに呼ぶなんて不自然過ぎる。

考えながら歩いていると、いつのまにか目的地の近くに来ている事に気が付いた。低い柵に囲まれ、目を疑う程に咲き狂う薔薇の花。

それはいつか見たテレビで紹介されていた薔薇園だった。

薔薇園の中心辺りに開けたスペースがあり、 ビュッフェ形式に料理が並んでいる。黒服のボーイやメイドが飲み物を片手に甲斐甲斐しく歩いていた。


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