そして私は行間の貴方に恋をした
「花言葉なんて知らなかったし、俺は想いを伝えるつもりもなかった。他には何も理由なんてなくて、ただ、あの人に笑って欲しかったんだよ」

名前も知らない美しい彼女はあの時言った。それが真実だったのかどうかはわからないし、きっとどっちでも良かったんだと思う。

『今日はね、私の誕生日なんだよ』

唐突に告げられた1年の中の1日しかないその日は俺にとって忘れられない日になった。俺と彼女が最後に言葉を交わした日。

「知りたい。聴きたい。太郎の事・・タンポポの事」

「ほとんど本に書いた通りだよ。特別何かがあったわけじゃない。ここで出会い、片手でも余るだけの日数を過ごし、俺は名前も知らない彼女に恋をした」

「本当に名前知らないんだ・・歳とかも?」


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