そして私は行間の貴方に恋をした
「それから何度も何度も読んだ。14歳の時主人公の貴志に恋をして、ヒロインの彼女に嫉妬した」

「そんなもん貴志は貴志で俺じゃないだろ」

華月は無言で俺を睨む。その目は『黙って聴いて』と俺に言った。

「それでも何度も繰り返して読んで、読んでいるうちに気付いたの。私は貴志に恋をしてるんじゃないって、山田太郎に恋をしてるんだって気付いた」

「だからそれは・・」

『俺じゃない』と言おうとして、華月の言葉に遮られた。

その声は静かで

柔らかくて

でも強くて

「15歳だった。数え切れない程【タンポポ】を読んで、ページが擦り切れるぐらい読んで、ノンブルもかすれて見えなくなるぐらい読んで・・・」

眩しいくらいの笑顔を浮かべて


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