そして私は行間の貴方に恋をした
自覚はあったが、読者に直接言われるとかなり堪える。大人気なく反撃の言葉を華月に返す。

「なら色んな恋愛しないとな。いやぁ、楽しみだ」

「ちょっ!何言ってんのよ!バカ!」

「お前がノンフィクション作家にって言ったんだろ?」

「そ、そうだけど・・」

「・・これは自信作だから心配ねぇよ」

その時、一際強い風が俺と華月の間を駆け抜けていった。

「少年、勝手に人を死んだ事にするなんて酷いじゃないか」

背後から届いたその声は10年経って尚、歩き出した俺を抱きしめ立ち止まらせた。

「・・仕方ないじゃないですか、あの時の俺にはああするしかなかったんですよ」

辛うじて絞り出した言葉は弱々しく、吹けば飛んでしまう程小さかった。





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