そして私は行間の貴方に恋をした
「いや、その情報いらないんですけど」

悪戯っぽく笑う陽子に反撃をしてみたが、効果の程は怪しかった。

「まあそんなこんなで私は君に恋をしたんだけど、何せ留学が決まっていたからね。その想いは秘めて行くしかなかったんだよ」

「まあまあシリアスな話なのにどうして『そんなこんな』とか言うかな」

「だからせめて私はひとつ嘘をつく事にした。『今日は私の誕生日なんだよ』ってね」

「なんで・・」

俯いたままの華月が小さく漏らす。その声はか細くていつもの明るい華月のそれとは似ても似つかない。

「何か形として欲しかったんだ、太郎君と私が過ごした時間の形がね」

そう言って陽子は後ろに組んでいた両手を前に持ってきて、大切な物を扱うように目の前に差し出した。

そこには長方形の薄いプラスチックでラミネートされたタンポポがあった。


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