そして私は行間の貴方に恋をした
「どうもしないよ、私はただ私の想いを君に伝えに来ただけだよ。私は今でも君に恋をしているってね」

もし、10年前のあの日に、いや、華月と出会う前にこの言葉を聞いていたならどうなっていたんだろう。

そんな意味のない疑問が浮かんで、意味がないから消えていった。

「あの時の貴女にあげたそのタンポポ、花言葉なんて俺は知らなかったんですよ。でも今は知ってる。知ってて俺は華月にタンポポをあげました」

陽子はただ微笑んで立っていた。動揺も焦燥も哀しみも何もない。

「あの日、あの日々、確かに俺は貴女に恋をしてタンポポをプレゼントした。それでもタンポポに意味はないんですよ、あそこに咲いていたのが綿毛になったタンポポだったとしても、俺はそれを貴女にあげてました」

探すまでもなくそれはそこに咲いていて、俺は茎の中間辺りに指を当てて、軽く力をいれた。


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