オフィスの野獣
あの夜のこと教えて?
「あ、起きた?」
あれからしばらくして目を醒ました。
窓の外を向くと、綺麗な夕陽が沈んでいくのが見えた。
もう夕暮れ。あれ、どうして寝てたんだろう。ここはどこだ、ろ、う……。
「気分はどう? 案の定熱が出てたみたいだから、ひとまずタクシー呼んで家にあげたんだよ」
会社の時とは一変して、やけににこやかな表情の西城斎が覗き込んでいた。
朝から飛び出した男の部屋にUターンしてくることに……!? なんでこんなことに!?
「な、なんであんたの家にあげたのよ……て、ていうか会社は……」
「あー、とりあえず体調不良で早退するとは言っといたよ。タクシーまで抱っこしてって、ついでに俺もサボった」
「学生が授業飛ぶ感じでサボってんじゃないわよ! 社会人舐めとんのか! どうしてあんたみたいな奴が……!」
そいつの社会人としての自覚のなさに、寝起きから大声を挙げてしまった。
起きたばかりだから途中で体力が持たなくて、私の意識が飛びかけた。危ない危ない。フラリと傾いた態勢を彼に支えられた。助けられては、自分から強く出ることができない。
ぶっ倒れたのを看病してもらったことにはもちろん感謝しているけど、私なんかにそこまでしてもらう義理はない。