オフィスの野獣
朝と野獣と洗濯と
翌朝に目が醒めたら、あいつの腕に抱きしめられて眠っていた。二人とも服は着たままだった。
昨夜は飲めるところまで二人で飲んで、私が先に潰れるとベッドまで連れていく彼にお願いをして添い寝してくれたのだ。私の世話をしてくれた彼はぐっすり眠っている。この様子なら手を出されていないようだ。
まだ日曜日の朝だから、先日のように飛び起きて会社に向かう必要もない。それだけで気が軽くなる。まだ寝ている彼を起こさないようにベッドを抜け出して、下着が乾いているか確認しにいく。服の方はもう少しかかりそうだ。
待っている間に勝手に冷蔵庫の中を詮索して、お腹の足しになりそうなものを物色。
男の一人暮らしだから少し心配だったけど、意外と自炊はするタイプらしい。二人分の朝ご飯は作れそうだ。
割と大きめなあくびをしながら二人分のグラスに牛乳を注いでいると、背後から音もなく寝起きの男に抱きつかれた。
「随分大きなあくびだな」
「わっ! ちょ、こぼれる!」
「何、緊張してる? こうしてるとなんか新婚みたいだよね」
朝から呑気に冗談を垂れ流している。しかも近い。
まだ寝ぼけているのかやけに機嫌よく積極的なそいつに呆れながら、作業中なのでさっさと離れてもらいたい。
「邪魔。どいてよ」
「前野が知ったら嫉妬するだろうな。朝ご飯まで作ってもらったなんて」
「人の話聞いてんのか貴様」
人の頭の上で何言ってるんだこいつ。やっぱり寝ぼけてんのか。
なかなか離れてくれないこんな奴と朝から攻防戦を繰り広げながら、なんとか朝の支度を済ませることができたのだった。