オフィスの野獣
数日前のことを思い出すと、今も身体がカッと熱くなる。
なのに職場で毎日顔を合わせる彼の方は、何事もなく同僚達と仲睦まじく過ごしている。だから私からも特に干渉することはなく、仲のいい女の同僚達と他愛ない日々を過ごす。
意味もなく彼から渡された部屋の鍵をバックに入れて、一人の帰り道にふと取り出して眺めることが増えた。
付き合うとか言って、こんな物を押し付けて、彼は何がしたいんだろう。
男性と付き合った経験なんて一度もないけど、私達は相思相愛なのだろうか。私はあいつのことを好きなのだろうか。西城斎は、何を考えているんだろう?
こんな関係は恋人だと胸を張って言えるのだろうか。
私達の関係は、何なのだろう。
「……わからないんです」
ここの看板商品だと言うアップルパイと紅茶をテーブルの上に乗せて、私の向かいに御堂さんが座る。
ここ最近のことを大まかに彼女に打ち明けて、淹れてもらった紅茶を一口飲んだ。ハーブティーのようだ。落ち着く香りがじんわりと広がる。
「わからない……というと?」
「……昔から男の人が苦手で、ヤンチャな彼のことは特に苦手でした。でも、熱を出した時は看病してくれたり、寂しいと一緒にいてくれたり……」
その優しさの見返りに、彼が私に何を求めているかわからなかった。
身体だけなら、こんな物を渡す必要もないのに。まだ負い目を感じているのだろうか。
「だけどこの気持ちが、好きなのかは……好きって何なの。こんなものを渡されても、どうしていいかわからなくて……」
こんな物があるから、いつも彼のことを考えずにはいられなくなる。
数日前のことなどまるでなかったように職場で彼に会うと、気まずくて、胸が締めつけられる。
なのに職場で毎日顔を合わせる彼の方は、何事もなく同僚達と仲睦まじく過ごしている。だから私からも特に干渉することはなく、仲のいい女の同僚達と他愛ない日々を過ごす。
意味もなく彼から渡された部屋の鍵をバックに入れて、一人の帰り道にふと取り出して眺めることが増えた。
付き合うとか言って、こんな物を押し付けて、彼は何がしたいんだろう。
男性と付き合った経験なんて一度もないけど、私達は相思相愛なのだろうか。私はあいつのことを好きなのだろうか。西城斎は、何を考えているんだろう?
こんな関係は恋人だと胸を張って言えるのだろうか。
私達の関係は、何なのだろう。
「……わからないんです」
ここの看板商品だと言うアップルパイと紅茶をテーブルの上に乗せて、私の向かいに御堂さんが座る。
ここ最近のことを大まかに彼女に打ち明けて、淹れてもらった紅茶を一口飲んだ。ハーブティーのようだ。落ち着く香りがじんわりと広がる。
「わからない……というと?」
「……昔から男の人が苦手で、ヤンチャな彼のことは特に苦手でした。でも、熱を出した時は看病してくれたり、寂しいと一緒にいてくれたり……」
その優しさの見返りに、彼が私に何を求めているかわからなかった。
身体だけなら、こんな物を渡す必要もないのに。まだ負い目を感じているのだろうか。
「だけどこの気持ちが、好きなのかは……好きって何なの。こんなものを渡されても、どうしていいかわからなくて……」
こんな物があるから、いつも彼のことを考えずにはいられなくなる。
数日前のことなどまるでなかったように職場で彼に会うと、気まずくて、胸が締めつけられる。