オフィスの野獣
彼女のほんと、彼の嘘
お店で売れ残りだという商品を詰めた箱を持たされて、雨が今にも降りそうな空の下を歩き出す。
もう少しあのお店でお茶会をしたかったのもあるけど、まだ閉店作業があるということで邪魔しないようにお礼を言って一人で出てきた。
雨が近いからか、人通りも少ない。
お店を出るといつもの帰り道とは、逆の方向に足が進んでいた。こんなにもらっても、一人で食べきれないし……。
そんなことを考えていると、憎い奴の顔が浮かんでくる。甘いもの、好きかな。
ふとこのまま一人の部屋に帰るのが寂しくて、彼の顔が見たくなった。自分の気持ちを整理するためにも。
なんて言い訳しながら、足取りを軽くしてその人のマンションに向かおうとする。
雨が本降りにならないうちに、彼のもとに急ごうとしたら、後ろから肩を突然掴まれた。
振り向いた瞬間、足元に落として潰れてしまった箱には見向きもせず、血の気が引いた私はその場から逃げ出した。