オフィスの野獣

「彼女ほしいよなー」

「あー、どっかに可愛い娘いないかなあ」

「みんな彼氏持ちだもんなー」



 私のデスクから少し離れている位置、西城のデスクの近くにいる男三人がダラダラと何か話している。


「あ、藤下さんは? あの人めっちゃ地味だけど、意外とデカいっぽい」

「あー。確かに地味だな。あんまり男と話してるの見たことないや」

「なあ、西城。お前藤下さんと話したことあんの?」

 その中の一人が、西城斎に話しかけていた。何の話をしているかは聞こえないが、何やら視線がチラチラとこっちに向けられている。なんなんだよ。


「さあ……どうかな」

「おいおい。西城でも話したことないとか、ガード固いな」

 仕事に集中しようとしたのに、今度は隣にいた女の同僚が、やけに人の胸を絶望を孕んだ目でじっと見てくる。え、何なの!?


「じゃあ俺、藤下さん狙ってみようかな」

「は?」



 女の同僚達から向けられるその憎悪に満ちた視線の暴力に、それどころではなくなる。
 だから彼らの間でそんな会話がされていたことなど知る由もなかった。

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