見上げる空は、ただ蒼く
そこまで葉音が言ったとき、
バタンとドアが開いて奏が病室に
飛び込んできた。
奏は学校指定のジャージのままで、
荒い呼吸を繰り返している。

「か...な......。」

私が呼び掛けると、奏はすぐに
ベッドサイドに駆け寄ってきて
包帯が分厚く巻かれた私の頭を
優しく撫でた。

「結乃...ごめん......っ。こんなに
怪我させられて...俺がいればっ。」

彼の瞳に、悔し涙が煌めく。
奏の肩越しに、葉音と金森さんが
病室を出ていくのが見えた。

2人きり。

私はそろりと右手をあげて、
彼の大きな手を取った。

「奏は悪くないよ。私がちゃんと
気を付けてなかっただけだから。」

「でも......。」

俺がいれば助けられたのに。
奏の瞳がそう語っている。
私は両手で奏の顔をにゅっと挟んだ。

「奏のせいじゃない。お願いだから
自分を責めたりしないで。」

ぎこちなく、頬笑む。
にこりと笑うことはもう、
今の私には不可能なことだった。
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