見上げる空は、ただ蒼く

煮物を口に運ぼうとしたとき、
目の前に人影が現れた。

顔を上げたくない。

無視して煮物を食べる。
ゆっくりと咀嚼していると、
いきなり顎をつかまれ、ぐいと
顔を上向きにされた。

煮物が喉に詰まって視界が僅かに
ぼやけていくなかやっぱり私の
前にいたのは凜だった。

そして、その後ろにいるのは葉音。

｢話は聞いたよ。結乃、葉音を
傷つけるなんて最低じゃん？
そんなことするんだったらちゃんと
報い受けないとね。｣

呆然とした。
葉音、凜に話したの......？
葉音に視線を向けると、彼女の
表情は哀しみと憎しみで歪んでいた。

違うの、葉音。

私は葉音を傷つけたくなかっだけ。

｢そっか......そうだよね。｣

私のこと、憎いよね。
傷つけたいって思うよね。

ごめん、葉音。

凜の平手打ちが私の頬に
いきおいよく叩き込まれた。
打たれた所がジンジンして痛い。

でも、抵抗は出来なかった。

私のためにいろいろしてくれたのに、
そのせいでクラスメートから
いじめられてしまった葉音のことを
思うと手が動かなくて。
涙が零れそうなのを必死で堪えた。