見上げる空は、ただ蒼く
面会室を出たところで待っていて
くれた奏の方を見向きもせずに
その場にへなへなと座り込んだ。

「嫌。嫌ぁぁぁあっ!やめて...。
私が悪いの!ごめんなさいっ。」

パニックになって取り乱す私。

「結乃っ?大丈夫、大丈夫だよ。
何があったとしても結乃には俺が
ついてるから。えぇっと、とりあえず
PTSDの薬飲んどこ、ほら。」

奏はそんな私を近くの公園のベンチまで
連れてくると包み込むように抱き締め、
背中を擦ってくれた。

彼は私の服のポケットから半透明の
タブレットケースを取り出して
中に入った錠剤を取り出す。

「はい、リボトリールとレキソタン。」

受け取ったそれを水と一緒に
飲み込むと、次第に呼吸が
落ち着いてきたようだった。

リボトリールとレキソタンは
簡単に説明すると精神安定剤だ。

私はPTSD持ちだから
いつもこの薬を持ち歩いている。

強い副作用があるけれど、今の私は
この薬がないと生きていけないんだ。

「ご、めん。奏。ありが、と。
も、う、だいじょうぶ、だか、ら。」

隣にいる幼馴染の心配そうな
表情をなんとかしたくて
その場しのぎの嘘を吐く。

「無理して嘘つくな。今さ、結乃は
苦しいんでしょ?だったら俺にも
その苦しみ分けてくれよ。俺だって
幼馴染として結乃の苦しみを
分かち合う覚悟くらいはあるからさ。」

真剣な言葉と眼差し。
私が顔を上げると、彼は満足そうに
ふっと笑みを見せた。
その顔を見て、何故か安心して。
気づけば私は泣いていた。
< 128 / 273 >

この作品をシェア

pagetop