見上げる空は、ただ蒼く
奏がそう叫んだとき。

「ん?結乃......?あぁ、そっか。
その子は戸籍上はアイツの子どもに
なってる子なんだろ?可哀想になぁ。
アイツの子どもにされるなんて......。」

え、戸籍上はアイツの子ども?
それってお母さんのことなの......?

奏のお父さんが私を見て
にやりと蔑むように笑った。
意味が、分からない。

「黙れ!早く帰ってくれよ......。」

奏は今では項垂れて懇願していた。

「じゃあな。」

颯爽と歩いていく奏のお父さん。
悠々とした態度の彼を前にして、
私は何もすることが出来なくて。
奏のことも全然、守れてなくて。

そんな自分が情けなくなる。
立ち上がろうとしても、身体が
全く言うことをきかなくて、私は
ぺたりと地面に腰をおろしたまま
深呼吸を繰り返した。

さっきPTSDの薬を飲んだところだからか
フラッシュバックすることはなかった
けれど、やっぱり誰かから暴力を
振るわれたりするとお母さんのことを
思い出してしまう。

血走った目、甲高い怒鳴り声、
罵倒の言葉、お母さんは私のことを
ストレス解消の為のサンドバッグ
みたいに扱っていた。

もう、あの頃みたいになりたくない。
あんな生活には戻りたくない。

視線を上げると、紗綾さんは
どこかに電話をかけていた。
血相を変えた奏がこちらに走ってくる。
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