見上げる空は、ただ蒼く
君の手をぎゅっと握りしめる。
これからは、絶対に。


この手を離さない。



ずーっと君の傍に居たい。

本音を言い合ったあとは2人とも
恥ずかしくなってどちらからともなく
視線をそらした。



「空、綺麗だな。」

ふいに奏が空を見上げて呟く。

「ほんとだ!」

いつの間にか日が傾く時間になり、
空が淡い橙や紅、朱、赤色の
グラデーションに色づいていた。

「空気って、なんだと思う?」

奏が私に向かって尋ねた。
私は微かに首を傾げる。

「なんだろ、分かんないや。」

彼は薄く笑った。

「俺たちの目には見えないけど
確かに存在するもの、だよ。」

私たちの目には見えないけれど
確かにそこに存在しているもの。

「空気、昼の月、闇の中のカラス。
過去、未来。それから、人の心。」

奏の言葉は心の奥深くに響いた。
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