見上げる空は、ただ蒼く
「演技も出来ない癖に自分で
悪いとも思ってないの?あのさぁ、
私はもう1回言ってって結乃に
言ったんだけど。」

菜々花の急かすような声に、さらに
私の身体は固まっていく。
どうしよう。

「はっ...はっ...。」

とてつもなく大きな不安が
襲ってきた途端に呼吸が乱れた。

「早くしてよ...!」

菜々花の声が少し遠くに聞こえる。
胸が苦しくて、息が出来ない。
そのとき、声が聞こえた。

「落ち着け、結乃。ゆっくり
息吸ってみ。それから吐き出して。
俺がいるから、もう大丈夫だ。」

この声は......奏だ。
私はゆっくりと息を吸い込んだ。
それから、ゆっくりと息を吐き出す。

少しずつ呼吸が落ち着いてきて、
私の視界がはっきりと戻ってきた。
菜々花は私を変な生物でも見るかの
じっと見つめている。
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