見上げる空は、ただ蒼く
「結乃ってどこまでも他人想いだよね。
私には絶対に真似出来ないや。」

葉音はそう言って笑った。
私は小さく首を傾げる。

「そうかな。私は葉音の方が勇気が
あってすごいと思うよ。」

私には、自分の意見をはっきり
主張したりすることが出来ないから。
自分の意見を言うって難しいことだ。
皆で話しているときに自分の意見を言えば
面倒と思われるかもしれない、鬱陶しい
と思われて嫌われるかもしれない。

それって怖い。
私には自分の意見を言う勇気なんかない。
傷つきたくないし傷つけたくないから。

そんな私を『優しい』や『他人想い』
っていう言葉で言い表してくれる
気遣い屋な人がときどき居る。

奏や葉音、紗綾さんは私のことを
優しい性格だと言ってくれて。
私はそれが誇らしくて嬉しかった。

でも、本当は違うんだ。

私は優しい性格なんかじゃない。
ただ臆病なだけなんだ。

だから『優しい』って言われたとき、
嬉しいけれどほんの少し胸が痛む。
自分が相手を騙す道化師になって
いるような気がして、苦しかった。

私は強くなれるんだろうか。
そんなの、分からないけれど。

いつか本当の優しい人になりたい。
そう思って......静かに笑った。
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