見上げる空は、ただ蒼く
3月の空気はぴりっと身を引き締める
ような冷たさで、私はベランダの柵に
寄りかかりながら手に息を吹き掛けた。
明日から、約1週間ほどの
短すぎる春休みが始まる。
それが終われば私たちは高校1年生だ。
私たちの学校は中高一貫教育の学校
だから別にそのままクラスも担任も
持ち上がりだし入学式も特別には行って
いないから普通の新学期と大した違いが
あるってわけでもないけれど。
僅かに白い息を吐き出して教室に戻ると、
ちょうど葉音がマフラーを外しながら
教室に入ってくるところだった。
私に気づくと、手を振りながら
笑顔で声を掛けてくれる。
「おはよ、結乃。」
「おはよう、葉音。」
葉音がバッグを置いたのを見計らって、
私はくつ箱に入っていた紙のことを
彼女に話した。
そして、ポケットから折り畳んだ紙を
取り出して葉音に見せる。
葉音はその紙をじっと見つめると、
やがてきっぱりと言い放った。
「こういうのは、無視した方がいいよ。
結乃の家庭環境について私はよく知ってる
わけじゃないけど。結乃と話したい理由が
あまりにも不自然じゃないかな。私は
放っておけばいいと思う。」
葉音は、私の家庭環境を知らない。
お母さんが轢き逃げで逮捕されたことも、
お父さんが離婚して出ていったことも。
でもその言葉にはどこか説得力があった。
「そうだね、放っておこうかな。」
私は再び紙をポケットにしまいこむ。
不思議なものには関わらないでおこう。
触らぬ神に祟りなし、というのだから。
ような冷たさで、私はベランダの柵に
寄りかかりながら手に息を吹き掛けた。
明日から、約1週間ほどの
短すぎる春休みが始まる。
それが終われば私たちは高校1年生だ。
私たちの学校は中高一貫教育の学校
だから別にそのままクラスも担任も
持ち上がりだし入学式も特別には行って
いないから普通の新学期と大した違いが
あるってわけでもないけれど。
僅かに白い息を吐き出して教室に戻ると、
ちょうど葉音がマフラーを外しながら
教室に入ってくるところだった。
私に気づくと、手を振りながら
笑顔で声を掛けてくれる。
「おはよ、結乃。」
「おはよう、葉音。」
葉音がバッグを置いたのを見計らって、
私はくつ箱に入っていた紙のことを
彼女に話した。
そして、ポケットから折り畳んだ紙を
取り出して葉音に見せる。
葉音はその紙をじっと見つめると、
やがてきっぱりと言い放った。
「こういうのは、無視した方がいいよ。
結乃の家庭環境について私はよく知ってる
わけじゃないけど。結乃と話したい理由が
あまりにも不自然じゃないかな。私は
放っておけばいいと思う。」
葉音は、私の家庭環境を知らない。
お母さんが轢き逃げで逮捕されたことも、
お父さんが離婚して出ていったことも。
でもその言葉にはどこか説得力があった。
「そうだね、放っておこうかな。」
私は再び紙をポケットにしまいこむ。
不思議なものには関わらないでおこう。
触らぬ神に祟りなし、というのだから。