見上げる空は、ただ蒼く
終業式とHRをしているうちにあの
紙のことはすっかり忘れてしまい、
そのまま私は家に帰った。

「ただいま......。」

言ってから、今は家に
誰もいないことに気がつく。

普段はたまに部活をサボった奏が
ソファーに寝転がってたりして
おかえりって言ってくれることも
あるけれど、今ごろきっともう
奏はフランスだ。

私はベッドに仰向けに寝転がって
ぼーっと空を眺めた。

中3になってから今まで、本当に
いろんなことがあったと思う。

学園祭の準備で事件が起きて、
入院して、葉音に嘘ついて。
凜に気持ちをぶつけて、お母さんに
会いにいって。


大事な君に嘘をついて、傷つけた。


大事な君を想って後悔して、泣いた。


大事な君とまた抱き合って、笑った。


きっといつかはすごく大切に
思っていた記憶さえも
忘れてしまう、そんな時が来る。

それは苦しいことだけれど。

今は1秒でも長く君との
想い出を覚えておきたくて。


君の笑顔も涙もこの胸に刻み込もう。


私はこんなにも君が好き。
この片想いの気持ちも想い出と一緒に
胸の中に一緒にしまいこんで。

私はベッドに寝転がったまま
いつのまにか深い眠りについていた。
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