見上げる空は、ただ蒼く
「何よ、今の。病気のフリ?」

私は、そっと目を伏せる。
上手く言葉が出てこなくて、ただ
じっと地面を見つめていると菜々花が
攻撃的なセリフを投げる。

「過呼吸でも起こしてみんなに心配
されれば練習が楽になるとでも
思ったわけ?ふざけないで...」

「ふざけてるのは、お前だろ。」

奏が静かなトーンで菜々花に反論した。

「結乃は昔、虐待を受けてたから
少しでも不安になるとすぐに
過呼吸を引き起こすんだよ。結乃に
あんな演技出来るわけないだろ。
なのに責めてどうすんだよ。病気の
フリなんかしてねぇよ。ふざけんな。」

「もういいよ、奏。今回の件で
菜々花はなにも悪くないから。」

私は菜々花の方を向いて、頭を下げた。
悪いのは、菜々花じゃない。
本当の意味で悪いのは、虐待の傷が
忘れられなくて今も体調を崩してしまう
弱い心を持つ私の方だ。

「ごめんね、菜々花。私も出来る限り
頑張るから指導よろしくお願いします。」
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