見上げる空は、ただ蒼く
あのあと熱を測って異常がないことを
確認してから私は家に帰った。

ベッドに転がってスマホの
メッセージアプリを開くと、
葉音からたくさんの着信や
メッセージが届いていて。

『倒れたって聞いたけど大丈夫?』

『ちゃんと休むんだよ。無理しないで。』

気遣ってくれる優しさに感動して
心がじんわりとあたたかくなった。

朝起きて、学校に行って、家に帰って。
1週間はあっと言う間に過ぎていく。

今日は1週間の始まりの月曜日。
いつの間にか奏がフランスに行ってから
早くも1ヶ月が経とうとしていた。

『ばあちゃんの手術、成功した。
あと1週間くらいで帰れそう。』

そんなメッセージが送られてきたのは
昨日の深夜3時。
フランスとは時差があるからあっちでは
お昼くらいなのかもしれない。

ふわりとあくびをしながら学校までの
道を歩いて正門をくぐり、靴箱を開ける。
はらり、と紙が落ちてきた。

まさか、あのときと同じ......。
私がそっとその紙を開くと前に見た
あの字で書かれた文章。

『放課後、屋上で待ってます。
真実を知りたくはありませんか。』

どうして。
どうしてこの人は私のお母さんの
ことを知りたいんだろう。

『真実を知りたくはありませんか。』

真実なんて、ハッキリしてる。
私のお母さんは私を虐待して、
お酒に酔ったまま運転して人を轢き殺した。

それが現実であり、真実なんだって
私はちゃんと分かってる。

紙を丸めてポケットに突っ込む。
背筋がゾワゾワしてなんだか怖かった。

教室は相変わらず冷たい春風のせいか
少しひんやりとしていて。
その冷たさが根拠のない恐怖心を煽る。
< 152 / 273 >

この作品をシェア

pagetop