見上げる空は、ただ蒼く
音をたてて開いたドアから降りて
周りを見渡せばそこは朧気な記憶に
ある風景そのままに何も変わらない
景色が広がっていた。

次の電車まではあと3分。

私はぴかぴかと光りながら次に到着する
電車を案内する掲示板を見つめた。

死にたい。

考えたことは過去にも何回かある。

その度に奏に助けられてきた。
でも、今こうして私がここにいること、
私に死ぬ選択を踏み切らせたのも君だ。

人はなんと残酷な生き物なんだろう。
裏切りなんてもう慣れたと思ってたのに。

奏は、私にとって最後の砦だった。
いつだって奏が居れば頑張れたから。
君がずっと隣に居て支えてくれたから。
私は今日まで生きてこられたのに。

私が消えても君は悲しまないよね。

だって私と君は入れ替りの子だから。
私が消えればきっと君は愛される。
それなら私は......自ら消えるから。

~まもなく電車が参ります
黄色い線までお下がりください~

機械的なアナウンスが流れると同時に、
遠くに電車のぼんやりとした影が見えた。
やがてその影が近づき、私は目を細めて
じっとタイミングを見計らう。
そして......




目を瞑ったまま走り出し、
黄色いラインを踏み越えて、
電車が突っ込んでくる線路に
そのままの勢いで飛び込んだ。

゛ドンッ゛

大きな音がして、鈍い痛みが
全身をゆっくりと走り抜ける。

直前に見上げた空はどこまでも
まっすぐな青で、まるで私の気持ちを
馬鹿馬鹿しいと嘲笑うかのように
太陽が煌めき、照りつけていた。
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