見上げる空は、ただ蒼く
「あ、そう。虐待ね。まぁ、
手を抜く気はさらさらないから。
ちゃんと練習やってよね。
シーン18から、リテイク。」

私は深呼吸をして、心を落ち着けた。
目の前にいる幼馴染を、
私が演じるジュリエットの恋人である
ロミオにそっと重ねてみる。

「あぁ、ロミオ。貴方は
どうしてロミオなの。名前が違ったと
しても、貴方は貴方。きっと何も
変わらないでしょうに。」

感情を込めて、微笑みを添えて。
震える声を必死で抑えてセリフを
紡いでいく。

「すまない、ジュリエット。あぁ、
なんで運命は僕たちを引き裂こう
とするのだろう。僕の愛する
ジュリエット。例え運命が2人が
引き裂こうとしたとて、貴女は私の
最愛の恋人。それが変わることは
生涯ないでしょう。」

奏のセリフに、心臓が早鐘を打つ。
すごく、カッコいい。
演技なのに、ドキドキする。
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