見上げる空は、ただ蒼く
結乃には結乃のお母さんと同じ血が
流れているのが私には分かる。

結乃は繊細だ。
そして同時に残酷だ。

傷つきたくない、傷つけたくない。

結乃はあの事件のあとからいつも
自分よりも相手のことばかり考えて、
相手を傷つけないように振る舞っていた。

泣いている子が居たら、励まして。
いじめられている子が居たら、そばに
寄り添って、もう1人で抱え込まないで
って優しく諭した。

でも、そんな結乃にもどう対応すれば
良いのかよく分からなかった子が
いるのを私は知っている。

その子は、何年か前の私たちの
クラスメートで、少しだけ人と違うことを
考える夢想家だったというだけで
クラスでかなり酷い扱いを受けていた。

物を隠されたり、落書きされたり、
全く根拠のない陰口を言われたり。
彼女は深く傷ついた。

そして。

反撃しようと思ったらしい。
私はたまたま、結乃がその子を励まそう
として失敗しているのを見た。

「私といっしょに戦おうよ。」

そう言った結乃に対しての彼女の反応は
本当に冷たいものだった。

「偽善者が何言ってんの。馬鹿みたい。」

彼女はそれから数日後に転校した。
クラスメート1人1人に手紙を残して。
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