見上げる空は、ただ蒼く
呆然として部屋を見回す。

それから、窒素含有複素環識化合物を
塩基性水溶液に溶かしたものを床に
しゅしゅっと霧吹きで吹き掛けた。

これは、所謂ルミノール反応というやつ。
俺が吹き掛けたこの不思議な液体は、
血液に反応して発光する。

じっと床をみつめていると、床はやがて
濃くはっきりと発光し始めた。

俺はスマホでそれを写真におさめる。

壁やテーブルの角でも同じように発光した
反応の様子をスマホで撮った。

これは、虐待の証拠。

結乃がもし虐待に耐えられなくなって
自殺を考えるようになったとしたら、俺は
これを警察に提出するつもりだ。

そのために今日は想い出の品を探したい
なんて嘘をついてまでここに来た。

結乃を傷つけるやつは許さない。
俺にとって結乃は何にも変えられない
掛け替えのない大切な存在なんだ。

何枚か写真を撮って俺は奥の部屋に進む。
そこには、ラジオが置いてあった。
古ぼけた、壊れそうなラジオ。
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