見上げる空は、ただ蒼く
『......なんで、ラジオが。』

こんなところにあるんだろ。
俺は少しずつラジオに近づいた。
小さくて赤っぽい色をしたそのラジオには
ボタンが2つしかついていない。

『録音』と『再生』

録音ボタンで録った音を、
再生ボタンで流して聞くんだと思う。

俺は興味本位で特に深く考えもせずに、
『再生』と書かれている方のボタンを
押してみた。

それが自分の後の人生を
左右することになるとも知らずに。

゛ザザッ゛ ゛ザーッ゛

まるでテレビ画面の砂嵐のみたいな音が
流れてそれから音声が再生された。

゛男の子なんかいらないのよ!
なんでお前なんか産まれてきたの!゛

゛私の女の子と交換しませんか?゛

どういう、ことだよ。
混乱した俺を余所に音声は続く。

゛えぇ、いいわ。じゃあ私は
女の子を貰うわね...ふふ。゛

゛じゃあ私はこの男の子を。゛

この声は......死んだ俺の母さんと、
結乃の母さんの声......。

「.........っ!」

俺はとんでもないことを知ってしまった。

自分の命が交換の代償にされたのだ
ということ、それから自分の親が
本当の親ではなく偽物だったということを。
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