見上げる空は、ただ蒼く
ラジオはこっそり家に持ち帰って、
神影さんにもバレないように自分の
部屋の引き出しの裏に隠した。

俺はスマホをポケットから取り出して、
1枚だけ持っている死ぬ前の母さんの
写真のデータを呼び出す。

その写真には、手に紫苑の花を持って
微笑む母さんが映っている。

じっと写真をみつめていると、
やがてあることに気がついた。

俺の目は、ハーフに見間違われるような
チャコールグレイをしている。
この写真の母さんの目も、西洋人みたいな
チャコールグレイだ。

でも......。

「これ、もしかしてコンタクトレンズか?」

黒目の縁に線が見える気がする。
かなりぼんやりとしていて本当にそれが
コンタクトレンズの縁なのかどうかは
分からないけど。

もっと鮮明な画像が欲しい。
俺の母さんが俺の本当の親じゃない
っていう確かな証拠がほしい。

そうだ。

ふとあることを思い付いて、
俺はうろ覚えの母方のばあちゃんの
番号に電話をかけてみた。

父方のばあちゃんには可愛がって
もらってたけど、母方のばあちゃんには
数えるほどしか会ったことないし。

呼び出し音が鳴ったあと、間延びした
ばあちゃんの声が聞こえた。

『もしもし。どちら様でしょう。』

俺は緊張してスマホを固く握る。

『久しぶり、ばあちゃん。奏だよ。』

挨拶すると、ばあちゃんは嬉しそうに
返事をしてくれた。

『あらま、奏かいな。声低くなったから
分からなかったよ。どうしたんだい。』

『あのさ。すごく急なんだけど、母さんの
写真ってばあちゃん持ってない?
なんか、目が濃いグレーのやつだよ。』
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