見上げる空は、ただ蒼く
奏はルミノール反応の様子を
何枚か写真に収めてから、
奥の部屋へと進んでいった。

リビングの奥の部屋には、お母さんから
絶対に入るな、もし入れば殺すって
ずっと脅されていたから実は1度も
入ったことがない。

お母さんが私に見せたくなかった部屋。

いったい何があるんだろう。

ドキドキしながらスクリーンに注目した。
奏が部屋のドアを開ける。

その部屋に、あったのは。

「.........っ!」

私は驚きを隠しきれなかった。
あの、ラジオ。
お母さんの会話が入っていたラジオが、
奏の前にどっしりと鎮座していた。

あのラジオはうちにあったの?
ずっとずっと前から、私たちの生まれの
真実を秘めたままそこに置いてあったの?

信じられない。

奏がラジオにおずおずと手を伸ばし、
『再生』と書かれたボタンを押す。

きっとあの音声が流れているんだろう。

奏がその場にあった本をラジオに向けて
投げつけて、何かを叫んだ。

投げた本が録音ボタンにあたり、
奏の叫び声がラジオに録音されていく。

彼はラジオを持ち上げた。

それをこっそりと自分の家に持ち帰り、
引き出しの裏に隠している。
そこで映画は終わった。
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