見上げる空は、ただ蒼く
映写機を2人が笑っているシーンで
ストップさせて私はその場面を
じっとみつめた。

これはたぶん、高校の学園祭。

お母さんたちのクラスは演劇を
やったみたいで、衣装を着た生徒が
満面の笑みでピースをしている。

友梨那さんは他の人よりも豪華なドレスで
真ん中に映っているから、もしかすると
ヒロインを演じていたのかもしれない。

その隣に映る夏乃香さんは村人っぽい
シンプルなエプロンドレス姿だ。

私も演劇やりたかったな......。

ジュリエット役を演じること、
ロミオ役が奏になったこと、それらが
最初に決まったときはこれから先の練習に
不安しかなかったけれど、ときどき
奏に助けてもらいながらも自分なりに
セリフ覚えたり必死で練習して。

練習中に演劇部員のアドバイスをめぐって
関係がこじれてしまったときも
正面から向き合って気持ちをぶつけて。

あのときはとにかく全力だった。

私はただ、クラスのみんなでいいものを
作りあげていきたかっただけだ。

『がんばろーな。』

そう言って笑った奏の顔が
ぼんやりと脳裏に浮かび上がる。
その笑顔を思い出すと、何故か
このままじゃいけないなって思った。

ここにいたら、ダメだ。
逃げ続けたらいけないんだ。
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