見上げる空は、ただ蒼く
「ごめん、痛いと思うけど。」

謝りつつ、ぐったりとしている
奏の身体を折り曲げる。

学校の集合朝礼の時みたいな
体育座りの体勢にすると、開いた
スーツケースにそのまま入れた。

「よいしょっ......と。」

頭が上になるようにして、
出来るだけそっと立てる。

それからスーツケースを
コロコロと転がして病院を出た。

「電車に乗って...いや、バスだな。」

バス停からバスに乗り込んで家に帰る。
私は両親が共働きで2人とも
海外を飛び回っているから、
家には今の時間でも誰もいない。

ずっと1人で過ごしてきたんだ。

ドアを開けて家に入ると、とりあえず
スーツケースから奏を出して
横長のソファにゆっくりと横たえた。

あちこちに目立つ傷。
きっと、凜と喧嘩したんだろう。

「恋は盲目ってやつね。」

結乃と奏の片想い合いは
見ていて本当にじれったい。

お互い両想いなのに、
怖がって踏み出せずにいて。

背中を押してあげたくなる。
< 225 / 273 >

この作品をシェア

pagetop