見上げる空は、ただ蒼く
「はぁ......。」

思わずため息が漏れる。

今はキャピュレット家の
侍女たちが噂をするシーンで、
私は休憩中。

慣れない役を演じているせいか
身体中がどっと疲れていた。

いつでも、どこでも。

何をしていても私にはいつも
あの言葉が付きまとう。

『出来損ない』

実の母親に貼られた、いつまでも
残り続けるレッテル。

忘れようとすればするほど、
忘れることが出来ない。

何かに挑戦したいと思っても
この言葉が頭に刻み込まれている
せいであと1歩を踏み出すことが
出来なかった。

『アンタなんかいらねぇんだよ!
せっかく娘を育てたのに!なんで
お前はこんなに馬鹿なんだ。』

私のせいで、お母さんはあんなに
怒ってたんだ。
挑戦できないのはあの言葉が
刻み込まれているからというより
単に自分が弱いからかもしれない。

うつむいていると、上から
聞きなれた奏の声がふってきた。
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